- 透かし縄目重ね亀甲編籠「清流」 -
竹工芸 角野 弘幸(かどの ひろゆき)

今回この卒業修了制作では、ちょうどカリキュラムで習い終わった亀甲編み(縄六つ目)と、花籠制作にはかかせない縄目編みを組み合わせたデザインを取り入れた透かし縄目重ね亀甲編籠「清流」を制作いたしました。2年間学び、過ごした京都府南丹市の森の中の風景を思い浮かべながら、清流を透かし縄目編みでせせらぎを表現し、清流のよどみを籠の中に、その中心に亀が呼吸しに鼻を出してきた水の波紋を表現しております。透かし縄目編みのせせらぎの隙間から漆黒の亀甲編みが見ることができます。この亀甲編みは大きな亀の甲羅を意味します。正面には縁起物の亀と合わせ、水引のあわじ結びを白竹であしらってみました。透かし縄目編みの隙間と積み重ねられることにより、籠表面での色の濃淡も見どころです。

- 語らいの Counter Bar -
木工芸 安田 光良(やすだ みつよし)

夫婦・孫との語らいの場、その中心となるカウンターバーを製作しました。好きな飲み物を好きな器で飲み、ゆったり語らいの場に!

【 作品の point 】

重厚さ、美しいフォルム<天板*前扉の比率、脚の脚線美,前扉の木彫,沈金>がポイントです。
大面積の天板、木彫を施した前扉に拭き漆を実施。深みある均一の光沢と、光の当たり方で表情を変える事に注目してください。
苦労した点は、
➀ 内部の違い棚&隠し蟻の箱物をスッキリ配置する為、背板・側板とホゾ接ぎし、垂れ防止⇒精緻な加工が重要(硬い花梨であり、僅かな誤差でかたぎ発生)
② 脚*ぬき*地板を組み、違い棚*背板*側板を組んだものと合体、その後、横かまちと合体⇒スキマなく合体するのが大変<サイズが大きく、少しの誤差でもスキマがでてしまう>
③ 天板、前扉は、反り、割れが、懸念された為、挽き材+芯材(米杉、柾目、3層構造)で木工ボンドで接着
④ 前扉は、上吊り式スライド方式で、室内重量スライドドアの方式を採用。天板に溝を欠き、アルミレールを埋め込みビス止め&前扉に、金属ベアリング&強い樹脂製のローラ内蔵した吊り金具でビス止め。スムースなスライドを実現。

- 鳥獣遊戯図大皿 -
陶芸 仲森 楓 (なかもり かえで)

鳥獣戯画の絵のタッチが好きなので、それを元にしてデザインを考えました。
日本の運動会をイメージして、お皿を見てくださる方が参加したくなるような、楽しげな雰囲気を意識しました。また、呉須だけでなく、上絵で色を付けることで、より楽しい様子が伝わると思います。

卒展出品は、しっかり抱えているこの一枚ですけれど、実は、お皿の形や構図を微妙に変えて、他にも何枚か作っています。
どれもしっかり出来上がっていて、どうやら卒業のための製作というよりも、楽しんで作らせて頂いている気持ちの方が大きいかも。卒業後は、陶芸工房で「職人」として頑張っていく気構えは十分なのですけれど、でも今は学校がとても楽しいのです。

- Paper Lace -
和紙工芸 丸橋 茅乃(まるはし ちの)

和紙をつむいで作った糸を編みこんで、タティングレースを作成しました。
レースが編めるだけの強度を備えた紙糸を作るのが、とても難しかったです。
基本的には、羊毛をつむいだりするのと同じ要領で、糸車を使ってつむいでいくのですけれど、その肝心の糸車を手に入れるのも、実はけっこう大変。
ようやく見つけたのは、オープンチャルカと呼ばれる、インドの糸車(写真5枚目、6枚目)で、自腹購入です。

和紙でつむいだ糸は、とても軽くて丈夫です。
しかも、編んだ作品をぎゅっと弛ませたり出来る。
表現の幅が広がります。
ほとんどの作品は、1本か、多くて2本の糸を使って編み上げています。

- 和紙輪箱(わしわっぱ) -
和紙工芸 土肥 真綾(どい まあや)

伝統×伝統をテーマとした作品をつくりたいと思い、伝統的な素材である和紙と、伝統的な技法の曲げわっぱを組み合わせて、置き型の照明にしました。秋田名物、曲げわっぱと同じ作り方なので、和紙わっぱ、と命名。
強度を出すために、ニスを染み込ませて固くしています。同時に、透明度も上がりました。

下の木皿は、木工芸の友人に作ってもらいました。
中に、乾電池式のLEDライトを入れて光らせると、和室だけでなく、洋風の部屋でも映えるデザインになっていると思います。

- 乾漆 藤図花器 -
漆工芸 城戸 映子(きど えいこ)

「藤」を題材に、アール・ヌーヴォー期の工芸への憧れを漆で表現しました。
たおやかに美しく垂れて咲く藤の花の姿を描くため、溜塗のシンプルな縦長の形状に、蔦や葉の曲線美を高蒔絵と透かし彫りで金彩風に表しました。
麻布を漆で貼り重ねて造形する「脱乾漆」と作り出しの稜線、曲面への蒔絵と螺鈿等、初めて学ぶことばかりで挑戦しがいがありました。
中塗漆の青色がほんのり透ける、潤みの漆の美しさを
感じていただければと思います。

水を入れる受筒は竹を用いて、花材により深さを調整できるようにしています。

- 四節の門 -
石彫刻 今坂 洸太(いまさか こうた)

365日の、ほんの一瞬を生きる草花の生命感、
小さな変化が無数に集まって生じる季節の流れ、
そしてそこに佇む自分という存在。
園部の街に来て感じたこの感動を、四季折々のモチーフで表現しました。

作品のきっかけは、先生の工場にあった石の門です。
それを見た時、自分もこういうものを作りたいと強く思いました。
園部では緑が身近にあり季節の移り変わりがとても鮮やかで、そんな四季折々のモチーフを彫り込んでいます。
また、スペインのサグラダファミリアで石工をされておられる、外尾悦郎さんとの出会いもありました。
自然を愛したガウディの思想や構想の話を、直接外尾さんからお伺いして、強い影響を受けたと思います。
どうぞ御自由に見て、触って、感じてください。

- 摩利支天図蒔絵立見台 -
蒔絵 加納 蒼恵(かのう さえ)

実家の寺で使う仏具を制作しました。
卒業制作に何を作るか悩みましたが、大卒からさらに進学という道を認めてくれた家族に恩返しがしたいと思い立見台を作りました。
メインの蒔絵には寺にある摩利支天像を題材にデザインを考えました。
摩利支天とは3つの頭と6本の腕を持ち、陽炎を神格化したものです。
昔争いが起こったとき月と太陽を守ったというエピソードがあったので、摩利支天の持ち物にちなんでその場面を表現しました。
平蒔絵、研ぎ出し、高上げなど二年間で習った蒔絵の技法をふんだんに盛り込んであります。摩利支天の躍動感にこだわり、手足部分は漆で厚みをもたせ、指の一本一本にいたるまで丁寧に描き割りしました。衣装部分でも手前にある布や鎧を高上げし、立体感をつけたのでそれを感じとっていただけたら幸いです。

仏具らしいデザインから離れすぎず、かつオリジナリティを表現するという点で、細部の配色や全体の統一感には気を使いました。たくさんアイデアを出してその中から良いと思ったものをピックアップするという作業は葛藤の連続ですが、意外と好きな作業だったりします。
これからも感性を磨き続けて、自分らしい作品を作っていきたいです。

※ インスタグラムやってます!
 今までの作品が載っているので覗いてみてください。
 https://instagram.com/blueechromium/?hl=ja

開会式の様子です


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2017年の卒展風景です