金属工芸専攻 教授中村 佳永
Profile
「京の名工」(京都府伝統産業優秀技術者)
30歳で家業の錺匠「竹影堂榮眞」の名を継承。
先代に続いてTASKで育成指導に注力。
江戸時代から続く錺金具の工匠の7代目。15歳で父親に弟子入りし、いまでは経営者の立場にもなる。
つくる面白さ、喜ばれる楽しさ。
その先にある
「未知なる表現づくり」へ。
Nakamura Yoshonaga
幅広い分野で通用する
金工の多様な加工技術。
金属工芸の魅力とは
切る、曲げる、溶接してくっつける。伝統工芸のなかでも、加工する技法が多種に及ぶ素材なんですよ。金属って、溶けますよね。溶けて固めたら、それだけでカタチになる。
それに、金属素材を活かすものづくりって、とても裾野が広い。金属工芸から仏具、ジュエリー、金具や機械部品、日用品まで。金工を学ぶ学生にも「いまみんなが学んでいる金工の多様な加工技術は将来、何にでも役に立つ。他の工芸分野でも必ず通用するよ」と伝えています。
伝統技術と最先端加工技術の融合
機械にできないこと、手でつくることの面白さを知って欲しいです。その部分を日々の指導でも大事にしていますし、手仕事の伝統技術を、最先端の金属加工技術と融合するコラボレーションも、学生が自ら挑戦してくれました。学びを活かす舞台を、新たに創り出すこともできるんですよ。
ものづくりの背景にある、
広い世界観を知る。
錺匠としての未知なる挑戦
27歳の時、これから自分が何をしたいか、見つめ直したんです。
その時に、改めて気づいたことがあります。15歳からの10数年間、ひたすらつくり、それを喜んでもらえる楽しみを実感しながら、技を究めてきた経験があるから、その先にある自己表現の世界につながったんだ、と。
ただお手本通りにつくることはできても、ゼロの状態から新たにつくるデザイン力や表現力の知識に乏しいと痛感しました。そしてもう一つ、気づいたことがあります。伝統的な金属工芸品って、例えば源氏物語を題材にした作品は、文学の素養を持つ職人の手から、生み出されていたんだ、と。
どんな想いからその物語が生まれたのか、背景にある世界観も知ったうえで、表現することが大事なんです。だから、これまでは手先の金工技術を磨いてきたけど、未知なることにも世界観を広げ、自分自身を磨くことの大事さも実感しました。
視野を広げ、広い世界を知る
自分の作品として表現するなら、その背景も自分で描き出さないといけません。茶道具で面白いものづくりを表現しようと思えば、自らも茶道を経験しないとわからない。そうやって、いろんな道を歩む人と対話を重ねることで、間違いなく世界が広がります。
私は30歳からでしたが、学生のみなさんはもっと若い10代から、いろんな出会いを始めることができるよ、と背中を後押ししています。
自分の表現に磨きをかけて、
認める人を増やしていく。
技術を学び、多様な表現にも磨きをかける
これからの時代は、金属工芸や自分の表現を認めてくれる人を、自らの手で増やしていくことも必要でしょうね。
新しく生まれるものがあれば、消えてなくなるものもあります。時代にふさわしい、自分らしい金工の表現を伝えられるつくり手になる。そして自ら、使い手に対して「こんな風に使ってみたら、面白いですよ」と対話する表現者にもなる。私自身もそうありたいですね、これからも。